なぜ人は将棋に魅了されるのか

将棋

数年前、私は当時藤井四段に魅了され、それから将棋ファンになった。

それからというもの、藤井先生を追っていくうちに、将棋というもの自体に魅了されることになるわけだが、その面白さはどこにあるのか。

観る将の私が、私の考える将棋の魅力を語っていきたいと思う。

きっかけ

私は小学生の頃、将棋好きの父がいつも日曜に見ていたNHK将棋トーナメントをなんとなく一緒に見ていた。

父にルールを教わり、将棋を指すことはできるようになったが、戦法などは一切知らず、将棋を勉強することもなかった。

そこから時が経つこと約20年、一人の天才が現れた。

みなさんご存知、藤井聡太である。

藤井先生がプロデビューから破竹の29連勝を達成し、それまで長らく将棋界の連勝記録として君臨していた神谷八段の28連勝を、約30年ぶりに塗り替えたのである。

しかも、プロデビューからというおまけ付きで。

これは将棋界だけでなく、世間を巻き込んだ社会現象と化し、大きな話題を呼んだ。

それをニュースで見た私は、「すごい子が現れたんだな」程度に思っていた。

そこからさらに2年ほど経った。藤井先生の29連勝でもたいして将棋に興味を持ってなかった私だが、10年来の付き合いがある後輩(麻雀仲間)が、実は将棋好きだったことを聞く。

こいつは羽生善治と木村一基が好きらしく、「木村なんて知らない」と言った私に、「解説面白いよ」と言い、一つの動画を私に紹介した。

これを見た私は衝撃を受けた。

こんなにふざけて解説をするプロ棋士がいたのかと。

その実際の動画がこちら。

ぜひ少しでも将棋のルールを知っている人は見てみてもらいたい。

ルールも知らない人にとっては少し難しいと思うが、それでも木村一基の解説のキャッチーさは伝わるだろう。

この木村先生は”おじおじ”というあだ名で将棋界で親しまれ、また解説名人としても有名だ。

しかもこの木村先生、解説ではこんなにふざけているのにも関わらず、一度自身の対局となれば、”千駄ヶ谷の受け師”と呼ばれる固い守備力が持ち味で、最前線で活躍する棋士であるというのだ。

(東京の将棋会館は千駄ヶ谷にあり、また将棋では守備のことを受けと言うところからこの異名が生まれている。)

この木村先生の解説を見てみようと、当時ニコ動で生中継されていた藤井聡太の対局を見た。

そこでも木村一基の解説は絶好調で、非常に面白かった。

そして初めて将棋の対局を数時間にわたって観戦した私は、藤井聡太という一人の天才に魅了されることになった。

将棋AIが発達し、AIが考える最善手が将棋の放送で示されるようになったが、この天才藤井聡太は本当にAIが示す手の通りに指していく。

カンニングを疑いたくなるほど、ほぼほぼ一致するのだ。

これが見ていて本当に気持ちが良い。

そして気づくと、藤井聡太を応援せずにはいられない気持ちになるのだ。

一度見てみればこの感覚がよくわかると思う。

藤井先生の対局はほとんどABEMAで生中継されているため、皆さんもぜひ一度見てみてほしい。

こうして、木村一基の解説をきっかけに、私は藤井聡太という稀代の天才に出会い、そして藤井聡太の対局を欠かさず観るようになっていった。

将棋中継の魅力

こうして藤井聡太にのめり込むようになった私だが、何回か観ているうちに解説を担当する様々なプロ棋士を知るようになった。

将棋はお互いの持ち時間が4〜6時間程度の対局が多く、2人合計で8〜12時間にも及ぶ長い戦いとなる。

そうすると、もちろん真面目な将棋の解説もするわけだが、棋士が1時間ほどの長考に入ると、さすがにその局面で解説することが尽きてくる。

すると視聴者を飽きさせないよう、様々な企画が行われる。

「解説の棋士の1週間のスケジュール紹介」、「解説の棋士の趣味の話」など、非常に解説の先生のパーソナルな部分に踏み込んだ話が聞ける。

すると今まで持っていたプロ棋士に対する固いイメージが変わり、棋士も一人の人間であることを知るようになった。

プロ棋士は競馬や麻雀が好きな人が多く、また棋士のフットサルチームや草野球チームもあるらしい。

そういったプライベートな話を聞いていくうちに、その解説の棋士自身について知るようになるのだ。

そして次の藤井先生の対局で、解説で見たことある先生が戦うところを観ると、今度はそのギャップに萌える。

将棋の難しい話はよく分からずとも、そのギャップ萌えだけでも非常に楽しめるのだ。

そして前述の通り、藤井先生が圧倒的な強さでなぎ倒していく。

こうしていくうちに次々にプロ棋士について知るようになり、そして彼らが戦う様子にかっこよさを感じる。

気づくと私は藤井聡太だけでなく、多くの棋士のファンになっていった。

(中でも藤井先生は別格で好きだが。)

将棋の魅力

こうして観る将になった私は、もちろん自分でも指し始めた。

私は将棋ウォーズという日本将棋連盟公認のアプリをやっているのだが、ちなみに棋力は1級でなかなか初段までの道のりが遠い・・・。

中継を観戦している時はわかりやすいプロの解説のおかげで将棋が分かった気になるのだが、指してみると全く上手くいかない。

上手くいかないのが悔しくなり、不思議とどんどんハマっていく。

そしてぜひやってみてほしいのは、アプリだけでなく対面で人と指すことだ。

一回本気で誰かとやってみてほしい。

一回負けてみて欲しい。

将棋は負けを悟った時、自分で「負けました」と宣言しなければならないのだが、これが信じられないくらい悔しい。

学生時代にバスケ部だった私は、部活で毎日努力をしたのに試合に負けた際に非常に悔しい気持ちになったことがある。

しかし将棋というゲームは不思議で、全く努力をしたことがなくても負けると信じられないほど悔しいのだ。

それは自分で負けを宣言するというところから来るのだろう。

時間が来たら負けが確定するバスケや、どちらかが規定のポイントを取り終わったら負けが確定するテニスなどのスポーツと違い、自動で終わることは無い。

自らが宣言した瞬間に負けが確定するのだ。

負けを悟ってから「負けました」と宣言するまでの間に指す数手は本当に地獄のような気持ちを味合わされる。

この対面での負けを味わうと、将棋を勉強しようと思うようになる。

この負けを自分で認める、いわゆる投了という仕組みが将棋の一つの大きな魅力だと感じる。

投了の魅力

では投了の魅力とは何か。

アマチュアでは自分の王が詰む(王が動けなくなる)まで指すこともたまにあるが、プロでは決してそれは無い。

皆さんもNHKの将棋を見てこう思ったことは無いだろうか?

「今対局が終わったけど、これどっちが勝ったの?」

プロの将棋棋士は自分がこの先逆転の見込みがないというところで投了をする。

しかしそれはアマチュアにとってはさっぱりよく分からない時点での投了であることが多いのだが、ここでプロ棋士の投了に対する一つの考え方がある。

「それは綺麗な局面で投了をする」というものだ。

逆転の見込みが無い時、プロは”形作り”ということを行う。

形作りとは、勝つ見込みが無い時に粘る手ではなく、綺麗な投了図を作るために指す手だ。

説明すると長くなるので形作りの詳細は割愛するが、綺麗な投了図を作り、そして投了する。

投了された勝者は、相手をリスペクトし決してその場で大喜びすることは無い。

こうしてどちらが勝ったか分からない不思議な終局の雰囲気が作られる。

このように将棋には綺麗な散り際、相手へのリスペクトというものが暗に存在し、その不思議な魅力を生み出しているのだ。

まとまりのない話になってしまったが、そういったところに私は将棋の魅力を感じている。

今後の発信

昨日、藤井先生が見事竜王戦7番勝負(4戦先勝方式)を4連勝で勝利し、新たに竜王の称号を手にすると同時に、藤井四冠となった。

今後はこういった将棋界の大きなイベントがあった時にその感想を発信していき、みなさんと将棋の面白さを共有していければと思っている。

将棋に関する最初の投稿はこの辺で失礼しようと思うが、今後も様々な将棋ニュースを発信していくので、ぜひチェックしてもらえれば。

それでは!

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